第2回定例会 ちよだの声小林たかや代表質問 全文
平成28年第2回定例会に当たり、ちよだの声を代表して質問をいたします。
「免震構造の重要性と認識について」区長にお伺いします。
先日の熊本地震では4月14日と16日に震度7を2回と700回を超える余震を記録しました。
そして、耐震改修してあった建物が次々と損壊(そんかい)していきました。同県益城町(ましきまち)も古い庁舎でしたが耐震(たいしん)改修済(かいしゅうず)みで、震度7に耐えられるはずが耐えられませんでした。報道機関の取材に役場の職員は「耐震補強をしたので、使えなくなるとは思わなかった」と答えています。今回の熊本地震では、耐震補強100パーセントの学校も相次ぎ破損(はそん)しました。
国は大地震が起きると被害状況を調べて、その結果を参考にして耐震基準の改正を行なっているので、今回のように国の耐震基準を守っていても被害が発生してしまうことは やむを得ないとも言えます。
建築基(けんちくき)準法(じゅんほう)に示される耐震基準は大地震という苦い(にがい)経験を元にして改正が繰り返されており、これからも新たな巨大地震が発生するたびにその被害に対処する形で耐震基準を改正されて行くことになります。
耐震基準を遵守(じゅんしゅ)することは、法律違反をしない最低のルールに合わせるだけで、区民の命や区民生活、社会生活の継続性や安全を確保するものではないのです。
ここで質問します。
- 区長は、熊本地震の教訓を踏まえ災害(さいがい)時(じ)のよりどころとなる学校・公共施設の安全性は、「被災(ひさい)時(じ) 対応(たいおう) 政策(せいさく)」が要(かなめ)であるという認識はありますか。
ご見解をお示しください。
では、今、どんな対策が練られているのでしょうか。
現在、地震対策のための3つの一般的な建築構造があります。
耐震(たいしん)構造(こうぞう) ・ 制振(せいしん)構造(こうぞう) ・ 免震(めんしん)構造(こうぞう)の3つです。
その違いとメリット・デメリットを比較してみましょう。
耐震(たいしん)は、揺れに耐える、抵抗する構造、
制振(せいしん)は、揺れを吸収する構造、
免震(めんしん)は、揺れを逃がす構造です。
耐震(たいしん)の場合(ばあい)、地震の揺れが直接建物に伝わり基準を超える、地震のたびに柱(はしら)や梁(はり)と主要構造壁などの躯体の損傷が進みます。免震と比較して、格段に家具の転倒が多く、震災後の修繕にコストが掛かります。
制振(せいしん)の場合は、地震の揺れは直接建物に伝わりますが、構造躯体の揺れは軽減されます。建物損傷(そんしょう)については、構造体を守るシステムのため建物としてはほとんど損傷(そんしょう)しません。免震と比較すると揺れ方は耐震構造に近く格段に家具の転倒は多いです。建築費用は比較的安価ですが被災後には非構造部材の補修が必要になります。
免震(めんしん)の場合は、地震の揺れが直接建物に伝わらず、建物も大きく揺れないため、建物の損傷が大幅に軽減され、家具の転倒も少ないのです。耐震に比べコスト面では、初期投資は割高ですが被災後の損壊部補修を加味すれば高いとは言えません。
地震対策では、コスト面を除けば、耐震構造<制振構造<免震構造となり、
断然 免震構造が優位に立っております。
(パネル ① 提示)
地震の揺れに対する影響 | |
耐震構造 | 耐える 抵抗する |
制振構造 | 吸収する |
免震構造 | 逃がす |
耐震構造<制振構造<免震構造
東日本大震災以降、国は震災対策として耐震補強と非構造部材の見直しを行い、天井崩落防止やエレベーターの脱落防止など耐震基準を改正しました。
どの自治体も新しく改正された耐震基準を守って、耐震診断・耐震改修を行なっています。
千代田区も公共施設の耐震改修をして安全性の確保を行ないました。
しかし、震災時に建物が倒れなくても、耐震基準が及ばない 什器、備品が損壊(そんかい)し、
揺れにより建物の中で被害が発生してしまえば、防災拠点となる公共施設等は、危険と判断され、すぐに支援体制や復旧作業にとりかかれず公共施設の機能は麻痺してしまいます。
これは過去の震災の被害状況から見れば明らかです。
実際、基準を超える揺れが起きた熊本地震では、耐震改修済みの益城町(ましきまち)庁舎(ちょうしゃ)や 小・中学校で破損(はそん)が見つかり、危険と判断されてその一部が閉鎖されました。
中には、被災者がいったんは避難して来たものの、校舎の壁(かべ)や床(ゆか)などに亀裂が見つかったことで、別の避難所に移ったケースも報告されております。
医療機関でも熊本市の 防災(ぼうさい)拠点(きょてん) 施設(しせつ)に指定されている熊本市民病院で天井の一部崩落や医療機材の転倒などがあり、使用が中止となりました。
これまでの耐震改修で建物の躯体は、頑丈になり倒壊の危険性は低減されています。
問題は、地震の揺れによる建物以外の崩落です。阪神淡路大震災では、
公共ホールや体育館は倒壊しませんでしたが、揺れによって天井や照明が落ちて危険な状態になり、非常時には避難所として機能しませんでした。
揺れによる非構造部材の転倒(てんとう)・飛散(ひさん)・損傷(そんしょう)の可能性は、構造の比較をすれば一目瞭然です。
耐震、制振、免震の比較 [震度6レベル] (引用 THK免震ウエブサイト)
大地震が発生した際、免震システムの有無によって室内の状況にどれだけの差が生まれるのかを、耐震、制振、免震での比較で表わしています。
可能性 | 免 震 | 制 振 | 耐 震 |
家具転倒 | 低い | 高い | 高い |
食器・ガラス類
飛散 |
低い | 高い | 高い |
家電製品の転倒・破損 | 低い | 高い | 高い |
躯体損傷 | 極めて低い | 低い | 高い |
(家具転倒比較パネル ② )
実際、熊本地震では、免震構造の熊本大学病院は、なんの影響もなく機能を発揮していたことがわかっています。また「免震構造の山鹿市(やまがし)の庁舎は、その効果を遺憾なく発揮し、地震災害対策を整然と進めることができました」と報告されています。
現状では、建設コストの割高を理由に 免震構造は、あまり普及しておりません。
ここで千代田区内の76公共施設を見てみましょう。
76件中、耐震構造は、74件、制振構造は、1件、免震構造は3件という結果です。
制振構造は、千代田区役所本庁舎。免震構造は、麹町小学校(麹町2丁目複合施設)かがやきプラザ(高齢者総合サポートセンター)、東松下町住宅でした。(パネル③)
23区では渋谷区が新庁舎建設の整備目標としてその一番に免震構造を採用しました。豊島区役所の新庁舎は免震です。世田谷区の新庁舎建設も免震構造を前提としています。
昨年、リニューアルした 東京駅の 赤煉瓦駅舎 も免震構造です。
千代田区は、大規模災害の発生時に、全ての小・中学校を地域住民の避難所に指定しています。
併せて、区長は、小学校は、地域コミュニティの拠点と言っています。
熊本地震の教訓として、 被災(ひさい)時(じ) 対応(たいおう) 対策(たいさく) は国の定める耐震基準を満たすだけでは迫り来る巨大地震には、対応出来ないと考えなくてはなりません。
今後の震災対策は、地震(じしん)大国(たいこく)日本(にっぽん)に暮らす以上、被災(ひさい)時(じ) 対応力(たいおうりょく)の高い免震構造で暮らすことが命を守るために一番大切なことです。
人の命を守り、事業継続を可能にするには免震構造しかないと言っても過言ではありません。免震構造を区の基本政策としなくてはなりません。
日本は明らかな地震国であり、火山国です。東日本大震災以降、地震(じしん)活動期(かつどうき)に入った日本列島です。
千代田区は、南海トラフ地震、そして首都直下型地震の危険地帯にあります。またその首都直下型地震は、30年以内の発生確率70%、南海トラフ地震のうち東海地方の地震については、30年以内の発生確率は88%にも上る参考値が公表されています。地震は必ず起きるのです。
2012年に地質学の専門家が集まる日本第四(だいよん)紀(き)学会(がっかい)で千代田区にとって衝撃的な調査結果の発表がありました。
JR田端駅近くから、飯田橋駅付近を通り、外濠に沿って(そって)四ツ谷駅付近に至る
全長約7kmの活断層が存在する可能性があると言うものです。(活断層パネル④)
巨大地震の危機が迫って来ており、もう想定外は、言い訳にはなりません。
ここで質問します。
- 麹町小学校(麹町2丁目複合施設)は、どういう理由で免震構造になったのですか。
麹町小学校は、平成15年2月(2003年)に防災拠点として最先端の設備を駆使して造られました。水平(すいへい)・垂直(すいちょく)方向の衝撃的極大 地震動に対応した免震・制震構造です。海洋型地震の水平方向の地震と直下型地震の垂直方向の地震に強い構造になっています。この工法によりますと200年から500年のまれに起きる大地震に対しても安全を確保することが可能であると力説されています。
しかも建物の揺れが小さいことから授業中の被災であっても、天井落下や什器の転倒もなく子どもたちの安全性が守られます。防災拠点としても小学校としても素晴らしい公共施設ですがどういう理由で免震構造になったかお答えください。(パンフ・パネル ⑤)
- 麹町小学校新設以降 新築された全ての子ども施設が、
九段中等教育学校 (富士見校舎) ・富士見小学校 ・ふじみこども園 ・麹町中学校 ・神田保育園 ・麹町保育園は、なぜ、免震構造にしなかったのですか。
- 現在、建替中の九段小学校校舎は、崖地修復のため大幅に工期が遅れていますが予定通り耐震(たいしん)構造(こうぞう)で進めますか。免震(めんしん)構造(こうぞう)に設計変更しますか。
そもそも、教育委員会が九段小学校校舎を耐震(たいしん)構造(こうぞう)で進めるという理由は、
無理やりの理由づけでした。
以下、教育委員会の5つの理由について、検証してみいたいと 思います。
- 1つ目の理由 教育委員会の説明は、耐震構造で耐震性は、確保されている。
耐震基準を満たして1.25倍の強度を持つ耐震性を有した建物にしている。
通常の地震には、耐えられる。耐震構造でも免震構造でも、人に及ぼす安全面ということでは、大きな違いがないとしました。
これらについては、今回の熊本地震で耐震基準を100パーセント満たした学校が破損して使用できなかった事実を見れば説得力はありませし、耐震構造と免震構造に安全性の大きな違いがありましたので安全性の理由は根拠が明確で無く、疑問だけが残ります。
- 2つ目の理由 耐震構造でも、揺れに対しては、児童が使う机や椅子は別として、ほかの什器類は全て固定するような対応を取っているから安全という理由です。
これについては、什器類は全て固定して安全でも、子どもは勿論のこと、棚に入れる日常使用する道具や備品類は、固定できないので、これらの飛散により肝心の命は救えません。
- 3つ目の理由 免震構造では工期が延びるので、平成30年1月末に竣工しないと卒業式が出来ないと言う理由です。
これについては、現在、既存擁壁解体中に、北側擁壁裏に通常の砂利でなくコンクリートであることが発覚し工法の変更が必要となった事と既存校舎解体作業中に障害物が出現した事で2.5ヶ月もの工期延長が確定しました。
このため、平成30年3月の卒業式を開催するどころか7ヶ月遅れて9月開校となる公算が大きくなりました。(パネル ビローン ⑥ )
これで工期を絶対視した理由が無くなったと言うことです。
- 4つ目の理由 免震構造だとコストが高くなると言う理由。
先の工法変更と障害物撤去で、当初予算より工事コストが高くなりました。
そもそも、耐震(たいしん)構造(こうぞう)のコストを100として免震(めんしん)構造(こうぞう)にしても130であったことを考えると、追加工事で費用がかかっても予算を追加するので、上限を決めた予算絶対主義でないのだから当初のコスト高だけでは、理由になりません。
- 5つ目の理由 免震構造は、横揺れには対応できるが、縦揺れにはほとんど対応できないとも答弁していましたが麹町小学校が、免震構造で縦揺れにも対応していることが確認されましたので理由になりません。
また、免震構造は、構造上の問題と可動空間確保のため
有効スペースが減少すると言う理由。
九段小学校の立地上、北側に擁壁があり基礎部分に免震構造を入れると擁壁を支えられないと言う理由。
敷地とのクリアランス問題で稼働空間確保が厳しいと言う理由。
また、今回の設計変更で出てきたものですが、教室を15クラスから18クラスに増やし根幹を変更しています。以前からクラス不足が指摘されていましたが、1年も経っていない内に変更しています。計画が曖昧でした。
もう一度、全てを検討することで解決可能です。
このように耐震(たいしん)構造(こうぞう)を肯定(こうてい)するために無理やり理由づけをしていました。
熊本地震を教訓に子どもたちを守るために免震構造を選ぶべきです。
熊本地震をきっかけに免震構造に設計変更すべきですが、お答えください。
- 麹町小学校新設以降(平成15年2003年以降)の公共施設は、15ありますが
子ども施設を除く3件のみ例外的に制振・免震ですがなぜです。
千代田区役所本庁舎が制振構造、
かがやきプラザ(高齢者総合サポートセンター)、
東松下町住宅は、免震構造でした。
耐震構造を採用していないこれら3施設の共通点は、民間と合築です。
東松下町住宅は、隣の民間住宅棟との2棟一体開発で進んで来た関係で民間住宅棟が免震構造ですので、免震構造にしないと格差がはっきりしてしまいます。この官民格差の解消と推察できます。
- 現在、計画中の万世橋出張所の工法についてまだ何も示されておりませんが免震構造を採用する予定ですか。お答えください。
- 今後、新設する全ての公共施設は、免震(めんしん)構造(こうぞう)で整備することが望まれます。
区長のお考えはいかがですか。
上記の点について、区長の明快な答弁を求め質問といたします。